『CKD診療における多職種介入の実際と効果』2024年5月22日(水曜日)小松市、能美市、加賀市学術講演会
2024年5月22日(水曜日)小松市、能美市、加賀市学術講演会
基調講演『当院における慢性腎臓病に対する取り組みの実際』
演者:小松市民病院 腎不全看護認定看護師 向出 美穂 先生
特別講演 『CKD診療における多職種介入の実際と効果』
演者:聖マリアンヌ医科大学 腎臓、高血圧内科 教授 櫻田 勉 先生
座長:小松市民病院 腎臓内科 内科医長 谷 悠記子先生
今まで、病院の先生がとても忙しそうで、あまり利用していませんでしたが、慢性腎臓病(CKD)教育入院がCKD患者さんの経過をかなり良くしてくれそうなので、これからは遠慮せずにお願いしようと思いました。
◆ 日本では高齢化に伴い、慢性腎臓病(CKD)患者数は年々増加している。約1330万人(約13%、8人に一人)
◆ 透析患者さんは約34.7万人。358人に一人。平均透析導入年齢は71.4歳
◆ CKD診療、特に透析治療は多額の費用がかかる。(一人 40万円/月)日本で、透析に要する1年間の費用は約1.63兆円である(医療費全体の3.6%)
◆ 2018年に厚生労働省でまとめられた『腎疾患対策検討会報告書』で、 2028年までに新規透析導入患者数を35000人/年以下にする(現在より5000人減らす)ことを目標とした提言が発表された。
◆ 実施すべき取り組みとして、①普及啓蒙 ②医療連携体制 ③診療水準の向上 ④人材育成 ⑤研究の推進の五つが挙げられた。
◆ 2023年のCKD診療ガイドライン(日本腎臓学会)は、この目的に沿うものとなっている。主な変更点として、生活習慣に関する項目が増えた事や、検診結果から、受診する基準がより明示された。
◆ eGFRスロープは腎予後の予測に有用な因子であり、−5.0ml/分/1.73㎡/年より急峻な場合はrapid pregressionとされる。(日本人成人の平均低下速度は-0.36ml/min/1.73㎡/年である)
◆ RA系阻害薬とSGLT2阻害剤投与初期には、通常、GFRが低下するが、3か月以内に30%以上の低下を認める場合は腎臓専門医に紹介することが必要。
◆ 検診受診者において、eGFR 45未満(40歳未満では 60未満)、尿蛋白1+以上は受診勧奨であるが、2年連続で尿蛋白±でも受診勧奨とされた。
◆ CKD患者において、口腔不健康状態はフレイルや死亡率上昇と関連するため、口腔ケアが勧められる。
◆ CKD患者において、高血圧とタンパク尿が抑制されるため、6g/日未満の食塩接種制限が推奨される。
◆ コーヒー摂取はCKDの進展抑制効果が期待できる。また、適度な飲酒のCKDに対する影響は明らかでない。禁煙は強く推奨される。
◆ 便秘はCKD発症、進展のリスクになる可能性がある。
◆ 保存期CKD患者において、通常よりも意図的に飲水量を増やすことは生命予後の改善や腎保護効果は期待できない。(脱水は避けるべきと思われるが)
◆ CKD患者において、適度な睡眠は、透析導入や心血管疾患を減らす可能性がある。適度な運動も推奨される。
◆ 保存期CKD患者において、B型肝炎ワクチン、インフルエンザワクチン、肺炎球菌に対するワクチン接種が強く推奨される。新型コロナワクチン接種の情報は限られているが、メリットは大きいと考えられる。
◆ 保存的CKD患者において、食事管理や服薬管理、血圧管理、禁煙など日々の自己管理行動がCKDの進行と心血管疾患の発症に大きく影響を及ぼす。そのため多職種による教育的介入は推奨される。
◆ 聖マリアンヌ大学における7日間のCKD教育入院は、その後のGFR低下速度を減少させ、透析導入までの時期を遅らせた。また透析導入後の死亡リスク低下の効果も示された(観察研究)。