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2024年7月10日(水曜日) 『新規2型糖尿病治療薬マンジャロをどう使うか?』

[2024.06.18]

2024年7月10日(水曜日)小松市、能美市、加賀市学術講演会

特別講演 『新規2型糖尿病治療薬マンジャロをどう使うか?』

演者:山梨大学大学院 糖尿病、内分泌内科学教室 教授 土屋 恭一郎 先生

座長:加賀市医療センター内科 岡本 拓也 先生

 

ようやく、供給が安定して使いやすくなったマンジャロは、史上最強の血糖低下、体重減少効果がある糖尿病治療薬と言って良さそうです。このお薬をうまく(正しく)使用することが今後の糖尿病診療において、重要なポイントとなりそうです。

 

◆ 多くの糖尿病患者さんは、合併症予防のため、HbA1c7%未満を目標値として治療を受けている。

◆ 低血糖が懸念される75歳以上の高齢者など、治療強化が困難な際には、HbA1c8%未満が目標値となる。

◆ HbA1c 6.5未満の糖尿病患者さんは、HbA1c 6.5以上の患者さんより各種リスクが低下する報告があり、糖尿病歴が短く、血管症などの併存疾患の少ない若年糖尿病患者さんは、より低い目標値(HbA1c 6.0~6.5未満)を目指すべきである。

◆ インクレチンは、食事摂取に伴い消化管から分泌されるホルモンで、食事により血糖値が上がると小腸下部からGLP-1(glucagon-like peptide 1: グルカゴン様ペプチド-1)、小腸上部からGIP(glucagon-like peptide 1: グルカゴン様ペプチド-1)が分泌され、膵臓に作用してインスリン分泌を促進する。

◆ インクレチンは分泌後、速やかにDPP-4によって分解されるため活性持続時間は数分と短時間である。DPP-4阻害剤はインクレチンの分解を抑制し、その作用時間を長くする。そのためDPP-4阻害剤は血糖上昇時のみ、作用し、単独使用では低血糖リスクは少ない。

◆ GLP-1受容体作動薬は、DPP-4による分解を受けにくいGLP-1のアナログ製剤であり、膵β細胞のGLP-1受容体に結合しインスリンの分泌を促す。GLP-1受容体作動薬も効果は血糖上昇時のみ出現するので(この機序が十分理解できていませんが)、単独使用では低血糖が起こりにくい。

 

◆ GLP-1受容体は膵以外にも肺、脳、肝臓、横紋筋、腎臓、GIP受容体は膵以外に胃、十二指腸、脂肪組織、副腎、脳、脳下垂体などに分布している。そのため消化管運動抑制効果や食欲を抑制する効果もみられる。

◆ 多くのGLP-1受容体作動薬が、2型糖尿病に対して使用可能であり、血糖値低下、体重減少効果に加え、DPP-4阻害剤ではみられなかった心血管合併症抑制効果、腎保護作用も証明されている。

◆ チルゼパチド(マンジャロ)はGLP-1受容体に加え、GIP受容体にも、単一分子として作用する世界初の持続性GIP/GLP-1受容体作動薬である。

◆ GIPは、GLP-1はともにインクレチンであり、インスリン分泌作用を有するが、GLP-1と異なり、グルカゴン分泌作用を持つため、血糖値低下作用に疑問を持たれていたが、実際にはチルゼパチドは高い血糖低下、体重減少効果を示した。

◆ GLP-1受容体欠損マウスに、チルゼパチドを投与し、GIP単独の効果を観察した実験において、インスリン抵抗性改善効果を認め、ヒトにおいても同様の効果が期待される。

◆チルゼパチド(マンジャロ)は他のGLP-1作動薬と比較して、HbA1c低下、体重減少効果の優位性を示し、5㎎でも十分な効果が見られた。(SURPASS J-mono試験、SURPASS-2試験)症例によっては2.5㎎でも十分な効果がみられると予想される。

◆チルゼパチド(マンジャロ)は2.5mg(週1回皮下注)で開始し、4週間後5㎎に増量する必要がある。その後も治療目標を達成するまで、4週間ごとに増量可能で(最大量 15㎎)、治療目標を達成した段階で維持量となる。通常維持量は5㎎以上であるが、患者の状態に応じて、5㎎から2.5㎎に減量して使用することは可能である。

◆チルゼパチド(マンジャロ)で多く見られる有害事象は吐き気、便秘などの胃腸障害である。

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