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2025年4月16日(水曜日)南加賀学術講演会『慢性便秘症治療の最適化~ガイドラインを踏まえて~』

[2025.03.05]

2025年4月16日(水曜日)小松市、能美市、加賀市学術講演会

特別講演 『慢性便秘症治療の最適化~ガイドラインを踏まえて~』

座長 国民健康保険 小松市民病院  診療部長 又野 豊 先生

演者 富山市民病院 内視鏡内科 部長 水野 秀城 先生

 

◆便秘の定義『本来排泄すべき糞便が大腸内に滞ることによる兎糞状便、硬便、排便回数の減少や、糞便を快適に排泄できないことによる過度な努責、残便感、直腸肛門の閉塞感、排便困難感を認める状態』

◆慢性便秘症は、『慢性的に続く便秘のために日常生活に支障をきたしたり、身体にも様々な支障をきたしうる病態』であり、慢性便秘症の治療目標はこれらの症状を改善させ、QOLを改善させる事である。

◆便秘診療において、狭窄性器質性便秘症(大腸がんや炎症性腸疾患)の鑑別が重要である。警告症状(排便習慣の急激な変化、血便、体重減少、発熱、異常な身体所見)がみられる時は精査が望ましい。

◆慢性便秘症をきたす薬剤は多数存在する。代表的なものは抗コリン作用を持つ抗ヒスタミン薬、抗うつ剤、向精神薬、抗パーキンソン病薬や利尿剤、カルシウム拮抗薬、オピオイドなどである。

◆慢性便秘症の発症リスクは性別(女性)、加齢、身体活動性の低下、腹部手術歴、精神疾患や神経疾患などであり、慢性便秘症の有病率は10-15%と見積もられている。

◆慢性便秘症は放置すると生存率を低下させる。全死亡:12%増加、心血管死亡:12%増加、冠動脈疾患:11%増加、脳卒中:19%増加。

◆慢性便秘症に対する食事指導は、欠食をしない事、水分をしっかり摂る事、発酵食品を摂る事、水溶性食物繊維を摂取する事が重要である。

◆水溶性食物繊維は便内の水分を増やし、腸内細菌層(善玉菌)の餌となる短鎖脂肪酸を増やし腸内環境を整えるほか、血糖の急激な上昇を抑制する。

◆水溶性食物繊維を多く含め食品にはキウイ、プルーン、リンゴ、ミカン、海藻類、カボチャ、オクラ、玉ねぎ、大麦、納豆などがある。

◆生活習慣改善、食事指導で改善しない慢性便秘症は、薬物治療の対象となる。第一選択薬は浸透圧性下剤(酸化マグネシウム、ラクツロースやPEG製剤)、治療に難渋した場合、上皮機能変容薬(ルビプロストン、リナクロチド)、胆汁酸トランスポーター阻害薬(エロビシキバット)が用いられる。オンデマンド治療として刺激性下剤(センノシド、ピコスフファート)、代替、補助治療薬としてプロバイオティクスや漢方薬が用いられる。

◆下痢の際によく用いられるプロバイオティクスは慢性便秘症における排便回数の増加、腹部症状の改善にも有効である。

◆酸化マグネシウム:胃酸と反応して塩化マグネシウムとなったあと、腸内で炭酸マグネシウムとなり浸透圧により腸内水分を増加させ緩下作用を示す。安価であるため第一選択薬として使われることが多い。酸分泌抑制薬(PPIやP-CAB)の併用で効果減弱する。胃全摘患者では効果が見られない。高齢者、腎機能低下している患者さんでは、高マグネシウム血症発症のリスクが高く、eGFR<30の方には控えるべきである。高マグネシウム血症の初期症状(嘔吐、徐脈、筋力低下、傾眠)に注意。添付文書上は2g/日まで使用可能だが、1g/日までの使用にとどめる事が望ましい。

◆PEG製剤(モビコール):2018年より使用可能となった。体に吸収されない。容量依存性に効果発現する。2歳以上の小児に使用可能であり、小児科で使用されることも多い。スープやジュースで溶解することができる

◆ラクツロース製剤(ラグノス): 製剤がゼリー状であり甘味がある。アンモニア低下作用もある。

◆ルビプロストン(アミティーザ):小腸粘膜上皮のクロライドチャンネルを活性化し水分の分泌を促進する。悪心、下痢が生じる事がある(特に若年女性)が、1,2週間で軽減する。少量(12㎍)から使用することで回避することができる。妊婦には使用できない。

◆リナクロチド(リンゼス):便秘型IBSにも適応あり。下痢の頻度高く少量から使用が基本。下痢を減らすには食前服用が望ましい。効果が弱いと感じるときは、食後服用で効果が強くなる。

◆エロビシキバット(グーフィス):回腸末端にある胆汁酸トランスポーターを阻害する事によって、大腸への胆汁流入を増やす。その作用によって腸管内での水分分泌や蠕動運動が促進される。効果発現が5時間ほどと早く、排便時間の調整がしやすい。

◆オピオイド(麻薬性鎮痛薬)は中枢神経のμ受容体を抑制し、痛みを抑える効果を発揮するが、消化管にもμ受容体が存在しこれが抑制される事によりオピオイド誘発性便秘が起こる。ナルデメジン(スイインプロイク)はオピオイド誘発性便秘に適応のある治療薬であり、消化管のμ受容体を阻害するが、中枢神経のμ受容体は阻害しない。

◆センノシド(プルゼニド):刺激性便秘薬。大腸の筋層間神経叢に作用して蠕動運動を促進、腸管からの水分吸収を抑制する。服用後数時間で効果を認める。長期連用は、耐性や習慣性を生じるためレスキューとしての使用が望ましい。メラノーシス(大腸黒皮症)の原因となる。

◆ピコスフファート(ラキソベロン):刺激性便秘薬。虚血性腸炎のリスクとなる可能性があり要注意。

◆慢性便秘症に使用される漢方薬は、大黄を含むもの(防風通聖散、潤腸湯など)と含まないもの(大建中湯など)に分類される。大黄の成分はセンノシド類であり刺激性下剤に準じた副作用を念頭に置く必要がある。大建中湯は腹部膨満や麻痺性イレウスに適応を有する。大腸血流を増やすと言われており、イレウス再発予防で使用される。

◆浣腸、坐剤、摘便も慢性便秘症に有効であるが、処置依存症や薬剤の過料投与となる可能性があり、可能な限り連用はさける事が望ましい。

 

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