『アルツハイマー型認知症治療の新たな選択肢~本邦唯一の適応を取得したレキサルティのBRIDGE試験紹介~』2025年9月11日(木曜日)南加賀学術講演会
2025年9月11日(木曜日)小松市、能美市、加賀市学術講演会
特別講演 『アルツハイマー型認知症治療の新たな選択肢~本邦唯一の適応を取得したレキサルティのBRIDGE試験紹介~』
座長 粟津神経サナトリウム 院長 小林 克治 先生
演者 香川大学医学部 精神神経医学講座 教授 中村 祐 先生
今まで日本では、認知症のBPSDに対して保険適応のある治療薬はありませんでした。しかし実際にはかかりつけ医の83%が抗精神病薬の処方経験があるそうです。『かかりつけ医、認知症サポート医のためのBPSDに対応する向精神薬使用ガイドライン (第3版)』
2024年9月、日本で初めてレキサルティが承認され、今後アルツハイマー認知症の治療を見直す必要があると感じました。
◆1906年に初めて報告されたアルツハイマー認知症症例は51歳の女性で嫉妬妄想、興奮状態の強い51歳女性であった。
◆アルツハイマー認知症の症状は中核症状(物忘れ)と周辺症状(BPSD)があり、どちらも日常生活に重大な影響を及ぼし、それぞれに対しての治療が必要である。
◆周辺症状(BPSD):Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)アルツハイマー型認知症に伴う行動・心理症状には妄想(物盗られ妄想、被害妄想、嫉妬妄想)、幻覚、抑うつ、不安、多幸・躁状態、易刺激性・攻撃性:暴言、暴力、拒否、徘徊、常同行動、睡眠障害、食欲・摂食異常、排泄異常が含まれる。
◆アルツハイマー認知症の初期には不安、抑うつ症状が主症状となりやすい。中期には妄想、幻覚、徘徊、興奮など精神症状、問題行動が顕在化しやすい。末期には意欲の低下、無言、無動となる。
◆認知症における「アジテーション」とは、情緒的な苦痛 情緒不安定に由来する活動性の亢進や攻撃的な言動・行動などであり、介護者に対して大きな負担となる症状である。
◆BPSDに対して、抗精神病薬を中心に治療が古くから行われていたが、 2005年4月、米国FDAは非定型抗精神病薬の使用が高齢認知症患者における死亡率を1.6–1.7倍に上昇させると警告した。
◆日本では、器質的疾患に伴う、せん妄、精神運動興奮状態、易怒性に対して一部の抗精神病薬を実情に応じて使用する事に関して措置がなされてきた。
◆アルツハイマー型認知症に伴うアジテーションを有する日本人患者における、レキサルティ(一般名:ブレクスピプラゾール)のプラセボに対する有効性を検証が2018年~2023年の期間に行われ、非常に良い結果が得られた。(プラセボ対照無作為化二重盲検比較試験:BRIDGE試験)
◆レキサルティは、アルツハイマー型認知症に伴う焦燥感、易刺激性、興奮、それらに起因する過活動・攻撃的言動に対し、2024年9月、日本で初めて承認された。
◆レキサルティはドパミンD2受容体・セロトニン5-HT1A受容体の部分作動薬、5-HT2A受容体の拮抗薬として作用する。セロトニンとドパミンの量を適切に調整してくれるため、セロトニン‐ドパミン アクティビティ モジュレーター(SDAM)と呼ばれる、そのため、従来の抗精神病薬より副作用が少ないと考えられる。
◆レキサルティは半減期 50時間以上、1日1回投与で安定するが、投与後6時間で最も効果が表れやすい。肝臓代謝であり、CKDの患者さんにも使用しやすい
