2026年3月25日(木曜日)小松市、能美市、加賀市学術講演会 『不眠症治療におけるオレキシン受容体拮抗薬の薬物選択とでデエビゴの位置づけ(仮)』
[2026.02.15]
2026年3月25日(水曜日)小松市、能美市、加賀市学術講演会
特別講演 『不眠症治療の現在地とこれから~オレキシン受容体拮抗薬の使い方~』
座長 粟津神経サナトリウム 院長 小林 克治 先生
演者 医療法人悠仁会 稲田クリニック 理事長・院長 稲田 泰之 先生
『ベンゾジアゼピン系薬(BZD)を、誰に対しても新たに使用しない事』
が大事であると強く感じました。
- ベンゾジアゼピン系薬(BZD)は、過去には比較的気軽に処方されていましたが、依存性(精神的、身体的)の問題で薬を減量、中止できなくなる可能性が高い。
- 身体的依存には耐性、離脱症状があり、数週間~数か月で形成されてしまう。
- BZDの代表的な薬剤はトリアゾラム(ハルシオン®) 、ブロチゾラム(レンドルミン®)、エチゾラム(デパス®)、ジアゼパム(セルシン®/ホリゾン®)など誰もが名前を知っているものも含まれます。
- 依存性以外のBZDの問題点としては、脱抑制(感情、衝動を抑える機能が効かなくなる事)、転倒、骨折(特に高齢者)、認知機能悪化などがある。
- BZDは、睡眠導入剤、抗不安薬、抗てんかん薬などに分類されますが、いずれも同様の問題がある。非ベンゾジアゼピン系といわれている薬剤;ゾルピデム(マイスリー®)やゾピクロン(アモバン®)なども同様に扱われている。
- 神経伝達物質であるセロトニンは、過剰労働やストレスにより放出が少なくなり、うつ病発症の一因となる。適切な睡眠によってセロトニン放出は回復するが、不眠症があるとうつ病発症のリスクが上昇する。
- そのため不眠症は適切に治療されるべきであるが、日本では不眠症のために受診する方は少ない。(代わりにアルコールに頼ろうとする人が多い)
- 不眠症があると、転倒のリスクが52%上昇するが、適切に睡眠導入剤を使用すると転倒リスクが減少する。
- GABA(ガンマアミノ酪酸)は強力な脳、脊髄の抑制神経伝達物質である。BZDは GABA受容体の感受性を上げ脳の活動を抑制する。この効果でBZDは不安、緊張を和らげる。
- BZD服用下では、脳がその作用に適応し、GABA系を弱め、興奮系シグナル(グルタミン酸;NMDA受容体やノルアドレナリン)を強化する。そのため薬が切れると強化された興奮系のみが残り不安や焦燥感を感じる。(過活動状態や反跳性不眠)
- 多くの患者さんは、反跳性不眠回避のためにさらにBZDを服用する事が多いが、実際には不眠の多く(3割程度)はプラセボ(偽薬)で改善する。
- BZDは作用時間が短いものほど依存・反跳性不眠が起きやすい。
- 一旦、BZD依存となってしまった患者さんにBZDをやめさせることは非常に困難であり、専門的な診療(精神科)が必要である。にもかかわらず今までBZDは多くの科において多用されてきた。(入口は広く、出口はせまい)
- 睡眠導入剤を頓服する事で、依存性を形成しやすくなる可能性がある。睡眠導入剤でよく眠れたという成功体験のため、再び服用したくなる人が多い。
- 不眠症治療において、睡眠衛生指導が重要。例: カフェイン、アルコールを控える、就寝前に強い光に暴露しない。日中は十分な光を浴びる。眠くならないのにベッドに入らない。早すぎる時間に就寝しようとしない。昼寝は、30分以内で、昼の早い時間に終わらせる。
- 20歳代前半では5時間程度の睡眠時間が生理的に要求されるが、高齢者では睡眠時間は6時間程度となる。
- オレキシンは、覚醒を安定化させる神経ペプチドである。オレキシン受容体拮抗薬は、覚醒を解除する薬剤であり、脳活動を抑制させない。したがってBZDにみられるような依存性や常習性はほとんどないと考えられている。
- BZD依存が一度形成されてしまうと、BZD中止で反跳性不眠などの離脱症状が強く出るため、即中止する事は難しい。BZDを徐々に減量する、作用時間が短いものから、長いものに切り替えるなどの工夫に加え、オレキシン受容体拮抗薬の連日併用が有用である。
