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『高カリウム血症の現状と課題~最近の国内疫学研究結果を踏まえて~』2023年8月30日(水曜日)小松市、能美市、加賀市学術講演会

[2023.07.15]

2023年8月30日(水曜日)小松市、能美市、加賀市学術講演会

特別講演 『高カリウム血症の現状と課題~最近の国内疫学研究結果を踏まえて~』

演者:川崎医科大学医学部 学長付特任教授 神田 英一郎 先生

座長:加賀市医療センター 内科 副院長 水冨 一秋 先生

 

 

◆ 高カリウム血症は、慢性腎臓病(CKD)において腎からのカリウム排泄が低下することにより起こる。

◆ 高度な高カリウム血症では、不整脈、心停止が起こる。これはCKD患者の死因の40%を占める。

◆ 血清カリウム値と総死亡の間にはU字関係が認められる。血清カリウム値正常(3.6~5.0mEq/l)と比較して血清カリウム値が高くても、低くても死亡率は高い。

◆ 心不全患者においても、CKDの合併やRAASi (レニン、アンギオテンシン、アルドステロン抑制剤:ACI、ARB、MRAなど)使用により高カリウム血症を来しやすい。

◆ CKD患者の40%、心不全患者の49%が高カリウム血症を繰り返す。

◆ RAASi使用は、CKD患者において、腎機能低下速度を遅らせ、末期腎不全発症、心血管疾患や全死亡を減らすことが報告されている。

◆ CKDステージG4 (eGFR 15-29)、G5( eGFR<15)の患者においてもRAASiを中止しないことが提案されている。(CKD診療ガイドライン2023)

◆ RAASi治療によって、高カリウム血症の発症は約2倍となる。

◆ CKD患者さんの実臨床においては高カリウム血症が発症した場合、それまで服用していたRAASiを中止や減量するケースが多い。

◆ しかし、CKD患者において高カリウム血症治療後、RAASiを中止、減量した群では、継続した群よりその後の心血管疾患の発症が多かった。BMC Nephrol. 2023 Jan 19;24(1):18

◆ 海外のガイドライン(ESC 2021HF guidelines)では、至適量のRAASiを継続するため、高カリウム血症治療の開始、頻回のカリウム値のモニターを推奨している。

◆ 高カリウム血症治療に関しては、従来のカリウム吸着剤は便秘や独特の風味のため長期継続率が高くなく、新たなカリウム吸着剤(sodium zirconium cyclosilicate,  patiromer)の考慮が望ましい。

◆ CKD患者さんに対するカリウム摂取の指導は複雑である。

◆ 尿中カリウム排泄が少ないとCKD発症のリスクが高い。Kidney Int. 2016 Oct;90(4):888-96.

◆ NEAPは食事中の酸負荷を示す指標である。NEAP: Net endogeneous acid production(推定内因性酸産生量. 経口酸摂取-吸収した塩基) NEAP(mEq/d)= =[54.5×たんぱく質(g/d)/カリウム(mEq/d)]-10.2 つまりカリウム摂取が多いほど、NEAPは低下する。

◆ 高NEAP患者はCKD進行リスクが高い。Am J Nephrol. 2014;39(2):145-52.BMC Nephrol. 2019 Nov 21;20(1)

◆ CKDにおいて、野菜や果物を多く含め健康的な食事と総死亡率の低下が報告されている。Am J Kidney Dis. 2021 Feb;77(2)

◆ これらの事より、ガイドライン的にはCKD患者への画一的な野菜、果物の制限は勧められない。(患者さんの状況に応じて、個別に指導するしかないが、果物などを一度に多量に食べるのは避けるべきだろう)

 

 

 

 

 

 

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