2024年9月19日(木曜日)『慢性腎臓病と貧血』小松市、能美市、加賀市学術講演会
2024年9月19日(木曜日)小松市、能美市、加賀市学術講演会
特別講演 『慢性腎臓病と貧血』
演者:金沢大学医薬保健研究域医学系腎臓・リウマチ膠原病内科学 教授 岩田 恭宜 先生
座長:小松ソフィア病院 腎臓内科 松野 貴弘 先生
CKDと環境因子についてのお話はとても新鮮で勉強になりました。
◆日本のCKD(慢性腎臓病)患者数は2011年の段階で約1330万人(国民の約8人に一人)であったが、2024年には約2000万人(約5人に一人)に達していると考えられている。
◆日本の血液透析患者数は、347,474 人(国民の360人に一人)である。それまでは年々増加していたが、2022年に初めて低下傾向となった。若年透析患者数は減少したが、高齢透析患者数は依然として増えている。
◆透析導入の原因疾患は第1位;糖尿病性腎症、第2位:腎硬化症、第3位:慢性糸球体腎炎、第4位:原因不明のCKDである。
◆原因不明のCKD: CKD u(unknown origin) もしくはCKD nt(non-traditional cause) の一部は高気温下での労働によって引き起こされるものが含まれる。
◆高気温下での労働は脱水や電解質異常を起こし、AKI(急性腎障害)を引き起こすが、その30%は6-12か月後にCKDを発症する。高気温による腎ダメージの機序は十分に解明されていないが、蓄積すると考えられる。
◆CKD uは熱帯、赤道地帯の国の屋外労働者に多く報告されているが、類似した状況であれば、どの国、地域でも起こりうる。中米では過去20年で少なくとも2万人がCKD uのため亡くなっていると報告されており、深刻な職業病と言える。
◆高気温下での労働は、心血管死も増加させる。
◆世界的気温上昇のため、今後もCKD uは増加すると見込まれる。そのため労働環境における予防管理はますます重要となる。
◆CKDは社会経済要因とも関連している。透析治療を要するCKD患者さんを減らすため、行政の役割も大きいと言える。
◆日本において、所得が最も低いグループ(平均月収136,451円)は最も高いグループ(平均月収825,236円)と比較して、急なCKD進行のリスクが1.7倍、腎代替療法開始のリスクが1.65倍高いことが示された。
◆年収が低いグループは、糖尿病発症のリスクも高く、外来受診率が低く、入院率が高い。
◆腎性貧血は『腎臓においてヘモグロビンの低下に見合った十分量のエリスロポエチンが産生されないことによって引き起こされる貧血であり、主因が腎臓以外に認めないもの』である。
◆エリスロポエチンは腎尿細管間質に存在するREP細胞で産生される。CKDの進行とともに、REP細胞は線維芽細胞に変化するが、初期の段階であれば可逆性である。
◆慢性腎臓病において、貧血治療は合併症を予防し、CKD自体を悪化させないために重要である。
◆透析患者において、先行的鉄投与群: (フェリチン>700 μg/Lまたは鉄飽和度≥40%でない限り、毎月400 mgの鉄を投与)は反応的鉄投与群: (フェリチン<200 μg/Lまたは鉄飽和度<20%の場合のみ鉄を投与)に比べ、心血管死、ESA使用量、感染症を減らした。PIVOTAL (Proactive IV Iron Therapy in Haemodialysis Patients) 試験(2019)
◆HIF-PH阻害剤は、HIF(hypoxia-inducible factor)を安定化させ、内因性EPO血中濃度を上昇させるほか、鉄の利用障害を改善させる効果がある。
◆フェロポルチン(Ferroportin)は、体内で唯一の鉄輸送膜タンパク質(細胞内から鉄をくみ出す経路)であるが、ヘプシジンによって抑制される、HIF-PH阻害剤はヘプシジンを低下する。