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 『成人肺炎診療ガイドライン2024』改定ポイントと最新エビデンス  2024年11月13日(水曜日)小松市、能美市、加賀市学術講演会

[2024.10.28]

2024年11月13日(水曜日)小松市、能美市、加賀市学術講演会

特別講演 『成人肺炎診療ガイドライン2024』改定ポイントと最新エビデンス

演者:名古屋大学医学部附属病院 呼吸器内科 講師 進藤 有一郎 先生

座長: 小松市民病院 呼吸器内科 医長 米田 太郎 先生

 

◆肺炎は、下気道症状(咳嗽、喀痰、呼吸困難、胸痛など)と全身症状(発熱、頭痛、筋肉痛、関節痛、精神症状、消化器症状)がみられ、確定診断は、胸部X線や胸部CTにおいて行われる。気管支透亮像を伴う浸潤陰影が、細菌性肺炎を示唆する所見である。

◆胸部X線で異常所見のない急性気管支炎や上気道炎 (咽頭痛、鼻汁、鼻閉)のほとんどはウイルス性である。(細菌による気管支炎は20例に1例未満)

◆近年の発熱外来においては、COVID-19、非COVID-19を鑑別することがまず必要となる。

◆肺炎治癒後も二次有害イベント(特に心血管イベントが増加しやすい)に注意が必要である。

◆市中肺炎(Community-acquired pneumonia)は,市中で生活している人に発症する肺炎であり、肺炎全体の7割を占める。

◆市中肺炎における原因微生物は、一位:肺炎球菌、二位:インフルエンザ菌(インフルエンザウイルスとは別物)、三位:肺炎マイコプラズマである。(ちなみに医療介護関連肺炎の原因微生物:一位:肺炎球菌 二位:肺炎桿菌、三位:MRSA、院内肺炎の原因微生物:一位:MRSA、二位:緑膿菌、 三位:MSSA、人工呼吸器関連肺炎の原因微生物:一位:緑膿菌、二位:MRSA、三位:クレブシエラ菌)

◆マイコプラズマ肺炎(非定型肺炎)は治療方針が異なる(βラクタム系薬が無効)ため、他の細菌性肺炎との鑑別が重要である。以下のうち、5項目以上を満たす場合、マイコプラズマ肺炎を強く疑う。 ①60歳未満 ②基礎疾患がないもしくは軽微 ③頑固な咳嗽がある ④胸部聴診上所見が乏しい ⑤迅速検査法で原因菌(マイコプラズマ以外の)が証明されない ⑥抹消白血球数が10000未満である

◆市中肺炎は院内肺炎に比べると予後良好な場合も少なくなく、外来治療が可能なことも多い。入院が必要な重症例を見分けるため、A-DROPスコアが使われる。A(Age):男性70歳以上、女性75歳以上 D(Dehydration): BUN21以上または脱水あり R(Respiration) :SpO2 90%以下 O(Orientation):意識変容あり P(Blood Pressure):収縮期血圧 90mmHg以下。3項目以上あれば重症と判断する。4項目以上で超重症。

◆市中肺炎を治療する際にはその地域での薬剤耐性状況を考慮する(日本では肺炎球菌のマクロライド耐性化が進行している)

◆ATS/IDSA市中肺炎ガイドライン2019における外来における初期治療

併存疾患(心疾患、肺疾患、肝疾患、腎疾患、糖尿病、アルコール依存症、悪性疾患)、無脾症がなく、緑膿菌、MRSAのリスクがない場合、アンピシリン、ドキシサイクリン、(当該地域での肺炎球菌耐性が25%未満の場合)マクロライド

心疾患、肺疾患、肝疾患、腎疾患、糖尿病、アルコール依存症、悪性腫瘍、脾臓摘出などの合併症のある場合、アモキシリン.クラブラン酸(もしくはセファロスポリン)とマクロライド(もしくはドキシサイクリン)の併用またはレスピラトリーキノロンの単剤療法

(緑膿菌、MRSAのリスク:最近の入院、90日以内の非経口抗生剤投与)

◆成人肺炎診療ガイドライン2024における市中肺炎のエンピリック治療薬(外来治療群)

細菌性肺炎が疑われる場合、βラクタム系薬(アモキシリン.クラブラン酸、スルタミシリン、セフジトレン.ピポキシル、セフトリアキソン注)

非定型肺炎が疑わる場合 ミノサイクリン、クラリスロマイシン、アジスロマイシン(内服及び注)

細菌性肺炎、非定型肺炎いずれの疑いの場合でも、内服レスピラトリーキノロン及び、ラスクフロキサシン注射

◆レスピラトリーキノロンの中で耐性菌対策として開発されたものはガレノキサシンとラスフロキサシンである。

◆レスピラトリーキノロンの多くは結核に対する抗菌力も有しており、使用に際しては結核の有無を慎重に診断する必要がある。

◆ラスクフロキサシン(ラスビック)は組織移行性が良好であり、肺膿瘍にも有効。市中肺炎の原因菌をほとんどカバーしており、嫌気性菌にも活性あり。腎機能による容量調節の必要なし。

◆院内肺炎では、市中肺炎と比べて耐性菌リスクが増加する。耐性菌リスクは①ICUでの肺炎発症②敗血症/敗血症性ショック ③過去90日以内での抗菌剤使用歴 ④活動性の低下:歩行不能、経管栄養、中心静脈栄養など ⑤透析を含むCKDのうち2個以上を満たす場合

◆耐性菌リスクが高い肺炎患者では広域抗菌剤(タゾバクタム.ピペラシリン、タゾバクタム.セフトロザン、カルバペネム系薬、第4世代セフェム系)、MRSAが疑われる場合MRSA薬が使われる。

◆耐性菌リスクが高くない肺炎患者に広域抗生剤を使用すると、薬剤耐性菌を増加させるだけでなく、患者の予後も不良となる。必要のない患者さんに広域抗生剤を使用しないことが重要である。(私も以前はよく第4世代セフェム抗生剤を使用していたと反省致しました)

 

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