『呼吸器感染症診療のポイント~COVID-19とインフルエンザ治療を中心に~』2025年2月12日(木曜日)小松市、能美市、加賀市学術講演会
2025年2月12日(木曜日)小松市、能美市、加賀市学術講演会
特別講演 『呼吸器感染症診療のポイント~COVID-19とインフルエンザ治療を中心に~』
座長 国民健康保険 小松市民病院 呼吸器内科 医長 米田 太郎 先生
演者 大阪公立大学大学院医学研究科 臨床感染制御学 教授 掛屋 弘 先生
ダイアモンドプリンセス号でのCOVID‐19流行が大騒動となったのが2020年2月でありました。
その後、全国の医療関係者はCOVID19対応にほぼ全力を注ぐ年月が続き、あれからもう5年経ったかと思うと、感慨深いものがあります。
◆2024/25シーズンの年末年始は、インフルエンザ流行が各地で過去最高レベルであった。流行株はA(H1N1)pdm09優位 であり、ワクチン株とほぼ 100%一致していた。
◆例年2月‐3月頃からB型インフルエンザの流行が始まるが、今年はまだ目立った流行はみられない
◆2024年はマイコプラズマ感染症も過去10年で最多であった。
◆マイコプラズマ感染症のファーストチョイスはマクロライドであり、マクロライドが使用できない場合、成人に対しては、ミノサイクリンが使用される。ミノサイクリンは8歳以下の小児においては禁忌であるため、トスフロキサシン(小児で適応のある唯一のキノロン)が選択される。
◆近年、マイコプラズマに対する薬剤耐性が増加している。小児に使用できる抗生剤を耐性化させないため、成人マイコプラズマ感染症に対する安易なキノロン系抗生剤の使用はさけるべきである。
◆インフルエンザとマイコプラズマ流行に隠れているが、COVID-19流行の第12波も始まっている。
◆COVID‐19は 1年に2回流行のピークがある(1月、8月)。
◆COVID-19 による累計死亡者数は全世界で約700万人である。その95%以上は65歳以上である。
◆新型コロナワクチンは、世界で1980万人の死亡回避効果があったと推定されている。
◆COVID-19 の原因ウイルスであるSARS-COV-2は様々な変異株が出現し、置き換わっている。2022年11月以降オミクロン株が主流となっているが、オミクロン株となってから肺炎発症が減少するなど弱毒化している。
◆ECMOや人工呼吸器使用を要する重症COVID-19患者も減少しているが、ワクチン未接種者、高齢者ではいまだ重症化リスクが高い。
◆重症化リスクの高い高齢者COVID-19患者さんに、早期から抗ウイルス剤を使用することで重症化を抑えることができる。しかし、ワクチン費用助成が終了してから、経済的な問題で抗ウイルス剤の使用率は低い。
◆COVID後遺症(Long COVID)とは、COVID-19罹患後、感染が消失した後も、少なくとも2ヵ月以上症状が持続し、他の疾患による症状として説明がつかないものである。
◆COVID後遺症の代表的な症状は、疲労感・倦怠感、関節痛、咳、記憶障害、集中力低下、頭痛、抑うつ、嗅覚障害、味覚障害、動悸、下痢、腹痛、睡眠障害、筋力低下などがある。
◆新型コロナワクチンや抗ウイルス剤はCOVID後遺症に対する予防効果も報告されており、ワクチン、抗ウイルス剤を効率的に使用することが今後も重要である。