『2型糖尿病の心不全治療』2022年11月24日南加賀学術講演会
2022年11月24日(木曜日) 小松市、能美市、加賀市学術講演会
特別講演『心不全発症、進展防止を見据えた2型糖尿病治療戦略IBD~広がるSGLT2阻害剤の可能性~』
演者:名古屋大学大学院医学系研究科 先進循環器治療学講座 特任教授 柴田 玲先生
座長:医療法人社団和楽仁 芳珠記念病院 副院長 内科科長 井野秀一先生
◆ 心不全、糖尿病、高血圧などは全てCOVID-19 の重症化リスクを高める。これらのリスクファクターの一括管理を行う事に関してSGLT2阻害剤は理想的な薬剤と言える。
◆ empagliflozin(ジャディアンス)は左室収縮の低下した心不全(HFrEF)のみならず、左室収縮の保たれた心不全(HFrEF)に対しても保険適応となった。
◆ 慢性心不全に対するジャディアンスの容量は10㎎のみ(糖尿病に対しては25㎎まで使用可能)である。
◆ 糖尿病は動脈硬化の危険因子であることはよく知られているが、心不全の独立した危険因子でもある。
◆ 急性、慢性心不全診療ガイドライン(2017)において、糖尿病患者さんは無症状でも心不全のステージA(リスクステージ)に分類される。
◆ 早期の心不全を診断するためにBNPが有用である。
◆ BNP200以上、NT-pro BNP900以上の患者さんでは、治療対象となる心不全の可能性が高いため専門医への紹介が望ましい。
◆ BNP100以上、NT-pro BNP 400以上でも、心不全の可能性があるため、専門医への紹介を考慮する。
◆ SGLT2 阻害薬投与直後に eGFR の低下を認める場合がある。それに伴い、BNP、NT-pro BNPも上昇することがあるが、その後安定すればSGLT2阻害剤の継続可能である。
◆ SGLT2阻害剤は、高齢者においても効果が期待できる薬剤であるが、尿路、性器感染症や脱水に注意が必要である。認知機能低下のため内服管理ができない方では適応を慎重に考慮する。
◆ EMPA-REG試験(2015年)において、empagliflozin(ジャディアンス)はプラセボに比べて、心血管合併症のある糖尿病患者さんの心不全入院(35%)、心血管死(38%)、全死亡(32%)を減らした。
◆ EMPARISE East Asia試験(2020年)では、一次予防(心血管疾患の既往がない患者さん)が60%含まれたが、empagliflozin(ジャディアンス)はDPP4阻害剤投与群に比べて、心不全入院、全死亡、末期腎不全発症を減らした。
◆ EMPEROE-REDUCED試験(2020年)において、empagliflozin(ジャディアンス)はプラセボに比べて、心血管死、心不全による死亡、腎機能の低下速度を有意に低下させた。
この試験において、日本人でempagliflozinの効果が大きい事、重症低血糖の頻度が高くない事も示された
◆ EMPULSE試験(2022年)では、急性心不全で入院した患者さんを対象に、状態安定後empagliflozin(ジャディアンス)を使用すると、全死亡、心不全イベント、急性腎障害の発症、利尿剤使用量を低下させることができた。
2020年11月29日付けで、日本腎臓学会から『CKD 治療における SGLT2 阻害薬の適正使⽤に関する recommendation』が発表されました。
《要点》
◆ SGLT2 阻害薬は、糖尿病合併・⾮合併にかかわらず、慢性腎臓病(CKD)患者において腎保護効果を⽰すため、積極的に使⽤を検討する。
◆ SGLT2 阻害薬は、eGFR15 mL/min/1.73m2 未満では新規に開始しない.継続投与して 15 mL/min/1.73m2未満となった場合には,副作⽤に注意しながら継続する。
ステージ4のCKD患者さんにSGLT2阻害剤が使用しやすくなり、喜んでおります。