『コロナ禍におけるCOPD治療』2023年2月15日(水) 小松、能美、加賀学術講演会
2023年2月15日(水曜日)小松市、能美市、加賀市学術講演会
特別講演『感染症専門医が考える咳と痰の直し方』~コロナ禍における慢性気管支炎への薬剤選択~
演者:関西医科大学附属病院呼吸器感染症、アレルギー科 教授 宮下 修行 先生
座長:しんたに医院 院長 新谷博元先生
COPD治療において、肺炎予防がその予後を大きく改善することを教えて頂きました。現在のコロナ流行下ではこの観点が非常に大事であると思われます。
◆ 慢性閉塞性肺疾患(COPD)の多くは喫煙によって起こる。慢性気管支炎や肺気腫もCOPDに含まれる。
◆ COPDの主な症状は咳、痰、労作時息切れなどであり、肺機能は徐々に悪化し重症化すると在宅酸素療法が必要となる
◆ COPDの初期は無症状であるため、多くの患者さんは進行して状態になって初めて受診する。
◆ COPDは肺炎などの感染を契機に増悪する。増悪の度に呼吸機能は不可逆的に悪化する。そのため増悪の回数が多ければ多いほど、呼吸機能はより早く悪化する。
◆ 肺炎は、抗生剤治療で治りうる病気であるが、高齢者の多くは、肺炎が治癒した後も、もとの生活に戻れない。つまり、肺炎は健康寿命を短縮させる。
◆ 健康寿命とは介護を要せずに過ごせる期間であり、平均寿命とは異なる。
◆ 特に、80歳以上の高齢者がCOVID-19に罹患すると、80%以上は1年後寝たきり状態である。
◆ 2022年ガイドラインにおいて、COPDの新たな管理目標は、現状の改善に加え、将来リスクの軽減(増悪の予防、健康寿命の延伸)も挙げられた。
◆ ビレーズトリエアロスフィアは、以下の3剤を配合している吸入剤である。
- ブデソニド(ICS 吸入ステロイド)
- グリコピロニウム臭化物(LAMA 抗コリン作用:副交感神経抑制作用、気管支収縮を抑制)
- ホルモテロールフマル酸塩水和物(LABA 交感神経作動薬、気管支拡張)
◆ ビレーズトリは、中等度以上のCOPDに対して2剤(LAMA、LABA)配合吸入剤と比べ増悪頻度を有意に減らした。単独では、肺炎リスクを増やしてしまうICS(吸入ステロイド)が含まれているにも関わらず、肺炎の合併も多くなかった。
◆ ICSは、コロナウイルスが気道細胞と結合する際の受容体であるACE2発現を減らすと言われている。
◆ COVID-19流行の初期、シクレソニド(商品名 オルベスコ)がCOVID感染における重症化予防が期待されたが。のちに有効性がないことが示された。
◆ しかし同じ吸入ステロイドであるブデソニド吸入はCOVID-19の有症状期の短縮、入院、死亡の減少を示すデータが示された。(PRINCIPLE試験、LANCET 2021)
◆ ブデソニドを含むビレーズトリは、将来COVID重症化予防の期待が持たれるところです。(現在のところの適応はCOPDのみ)