『糖尿病治療 GLP-1療法』2022年3月9日南加賀学術講演会
[2022.02.18]
2022年3月9日(水曜日)
特別講演:『GLP-1療法の新たなる展開 ~注射剤と経口剤の有用性~』演者 洪内科クリニック 洪 尚樹先生
座長 小松市民病院 内科医長 窪田美幸先生
- 糖尿病治療の目標は時代と共に変遷している。
第1期(紀元前~1920年頃):糖尿病性昏睡を回避する
第2期:網膜症、腎症を防ぐ
第3期(1993年頃~):心血管病変を防ぐ
- 糖尿病における血糖管理の指標であるHbA1cは、細小血管障害のマーカーであるが、動脈硬化のマーカーではない。
- 2008年のACCORD研究において、厳格に血糖コントロール(HbA1c<6.0未満)された群で動脈硬化性疾患が増加した。HbA1cのみを目標にする糖尿病治療管理が見直されるきっかけとなった。
- 2009年に発売されたDPP4阻害剤はその効果と安全性より、日本では、糖尿病治療の中心的薬剤となった。
- DPP4阻害剤はインスリン分泌をさほど増やさず、グルカゴン分泌を抑制することで血糖低下させる。(グルカゴンが一躍注目されるきっかけとなった)
- DPP4阻害剤と同じインクレチン関連薬であるGLP-1作動薬は、当初、DPP4阻害剤ほど使用されなかった。その理由はGLP-1作動薬の国内での承認使用量が海外の半量程度であった事にあると言われている。
- 糖尿病治療薬のうち、心血管病変を減らすことが大規模研究で証明された薬剤は、GLP-1作動薬、SGLT2阻害剤、ピオグリタゾンの3種のみである。心血管疾患のリスクの高い患者さんではこれらの薬剤を考慮するべきである。特に、SGLT2阻害剤は糖尿病治療薬として開発されたが、現在では心不全、高血圧、腎機能障害と治療薬として適応拡大されている。(同じインクレチン関連薬である)DPP4阻害剤で良いデータが出なかったのは、GLP-1作動薬ほどGLP-1濃度を上昇できない事が想定されている。
- GLP-1作動薬は血糖低下作用の他に、食欲低下させる効果があり体重減少が期待できる薬剤である。
- 多種の糖尿病治療薬を服用してもコントロール不良な患者さんや、肥満のある患者さんでは、GLP-1作動薬を考慮することが望ましい。
- GLP-1作動薬は今まで注射製剤しか存在しなかったが、 内服薬が発売され、活躍の幅が広がった。